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サクラセグロハバチ
Allantus nakabusensis


サクラセグロハバチの幼虫は、最大体長15mm程度、頭は淡黄色、体は緑色を帯びた灰白色、ホストはサクラ類で、葉裏で丸まっていることが多い。多化性で、東京都における幼虫出現時期は、1化目が5M-5E、2化目が6M-6Eごろと思われる(7月以降は現在調査中)。終齢幼虫は枯れ木に穿孔し蛹化する。

同属のハグロハバチが枯れ木にも土にも潜ったので、サクラセグロハバチも同じかも知れない(2009-8-7)。

成虫は、大きさ6-7mmで、腹部各節は黒地に淡色紋を持つ。この腹部の斑紋が特徴的であり、幼虫から飼育した場合、識別は容易である[補足1]。

本種は現在Allantus属に分類されているが、再検討の必要性がありそう[補足2]。

幼虫

若齢から老齢まで、外観にはあまり変化はないようだ。

終齢

終齢幼虫は、頭と体の色が濃くなり、体長がだいぶ縮む。

蛹化

終齢幼虫は1日近く動かずにいるが、その後枯れ木に穿孔し蛹化する。枯れ木は爪で削れるぐらいに柔らかくなったものが良さそうだ。

以下は羽化後、穴の中を確認してみたところ。

成虫

写真は羽化した飼育個体。3週間ほど留守にしていた間に羽化したので、蛹の期間はまだわかっていないが、2週間程度ではないかと思う。現在2化目を飼育中なので、判明したら報告したい。

成虫は腹部の斑紋が特徴的だが、同属のツツジセグロハバチと似ているらしい。個体変異もけっこうあるようなので、成虫から同定する場合は注意が必要。

食樹

※未縞

食痕

※未縞

幼虫出現時期

成虫が短期間で羽化したので、多化性であることは間違いないと思う。5月の中頃から東京都府中市において観察を始めているが、6月の上〜中旬まで大阪に行っていて状況が把握できておらず、以下推測による。継続して観察中。

  • 1化目: 5M-5E
  • 2化目: 6M-6E
  • ...

天敵

寄生蜂と思う。体長3mmほど。2枚目は地面に落ちたところだが、離れようとしなかった。時間がなくて、これ以上は観察できていない。

補足

補足1: 吉田浩史さんから教えていただいた、成虫の同定に関する情報です(2009年6月)。

このハバチをはじめ黒色で淡色紋を持つハバチは、紋の形状や範囲に変異があります。このハバチと斑紋が似たものは同属のツツジセグロハバチ A. rhododendri のみです。こちらも変異があるようですが、今回は幼虫からの飼育ですのでサクラセグロで間違いないと思います。

補足2: こちらも吉田浩史さんから教えていただいた、分類に関する情報です(2009年6月)。

サクラセグロハバチの所属については問題が残っています。日本産広腰亜目の食草(III)で奥谷禎一先生が書いておられるように、昔からAllantusとは別属という意見がありましたが、長い間ちゃんと検討されていませんでした。その後、1999年に中国で新属Stenemphytusが記載され、サクラセグロハバチも同時にその属に移されました。ところが、2003年にはAllantus属の新種として、サクラセグロハバチの近縁種と思われるツツジセグロハバチ A. rhododendri が記載され、Allantus 属の検索表中にサクラセグロハバチも含まれています。この中にはStenemphytusについては全く触れられていません。

というわけで、Stenemphytus属の模式種とサクラセグロ、ツツジセグロの3種をそろえて再検討が必要と思われますが、「大阪のハバチ・キバチ類」の作成時にはそこまでできず、Togashi (2003)に従う、という形になっています。

Wei, M. & Nie, H., 1999. A new genus and three new species of Allantinae (Hymenoptera: Tenthredinidae) from China. Journal of Central South Forestry University, 19(3): 15-18.

Togashi, I., 2003. A new species of the genus Allantus Panzer (Hymenoptera: Tenthredinidae) feeding on Rhododendron reticulatum D. Don (Ericaceae) in Japan. Proc. Entomol. Soc. WAsh., 105(4): 896-900.

参考文献

履歴

2009-6-30

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