サクラセグロハバチ 同定編
※ 旧タイトル: サクラハバチ1(仮) 同定編
※ 専門家に見ていただき、サクラセグロハバチであることが判明した。この文書も、もう少し奇麗にまとめ直してみようと思うが、そのうち…。
3週間ほど家をあけていた間に羽化したようで、帰ってきたら死んでカチカチになっていた。なんとか同定してあげたいが、ドシロウトがどこまでできるでしょうか?参考にしたのは、最近入手した「大阪府のハバチ・キバチ類」。翅脈等の用語は、北隆館の昆虫大図鑑の最初の方に載っていた。翅が撮影しにくいので、ネット上で調べた方法で軟化を試みてみたが、時間が足りなかったのか、うまくいかなかった。とりあえず、このままできるとこまでやってみることにした。以下、羽化した2個体(おそらくオスとメス)の両方の写真を使っているので、お断りしておく。
科の検索
1b. 触角は複眼下縁よりも上、頭盾の上の顔面より出る → 2
8b. 頭盾は頭部と明らかに分離される → 9
日本産ハバチ科の亜科の検索
1b. 前翅基脈(1)と肘脈(2)は亜前縁脈(3)上のほぼ一点で接する。離れる場合…(略)。 → 2
2b. 前翅肘脈基部は直線状か、わずかに曲線となる程度 → 3
3b. 前翅の径横脈(1)を持ち、前翅第1反上脈(2)・第2反上脈(3)は別の肘室(4,5)につながる → 4
4a. 前翅基脈(1)は直線的で、第1反上脈(2)とほぼ平行 → 5
日本産ハグロハバチ亜科の属の検索
1b. 触角は9節 → 2
2b. 後基節(1のあたり)・腿節(2)は普通で、腿節末端は腹端を超えない → 5
5a. 後翅に閉じた中室は無い→ 6
6b. 頭盾下縁は中央部が湾入する。→ 7
触角が腹部より短ければハグロハバチ属、長ければクリハバチ属と。どこまでが腹部か良くわからん…。図の赤い線はコピー&ペーストしたので同じ長さ。
ネットで調べる
兵庫県立 人と自然の博物館が公開している文書に、ハバチの成虫の写真が多数載っているので眺めていたら、ハグロハバチ属のサクラセグロハバチが似たような感じだった。ただし、頭の付近がだいぶ違う。目が白いし。
後は掲示板で聞いてみようと思う。
「蜂が好き」の掲示板に問い合わせて、管理人の青蜂さんから以下のコメントをいただいた。
断定はできませんが、種名はサクラセグロハバチでよろしいのではないでしょうか。目の色は標本作製の過程で変わる場合もありますし、頭部の模様についても個体差ではないでしょうか。
青蜂さん、ありがとうございました。目の色については、聞かないとわからなかったなぁ。個体変異とか季節変異は数を調べればわかると思うので、もう少し調べてみるか。
と思っていたら、なんと「大阪府のハバチ・キバチ」の著者の吉田浩史さんから情報をいただいた。
まず、写真のハバチはサクラセグロハバチ Allantus nakabusensis です。このハバチをはじめ黒色で淡色紋を持つハバチは、紋の形状や範囲に変異があります。複眼の色は乾燥に伴う変質によると思われます。ハバチの複眼はアオメツマグロハバチのような一部の例外を除いて通常黒ですが、乾燥すると色が抜けることがあるようです。
このハバチと斑紋が似たものは同属のツツジセグロハバチ A. rhododendri のみです。こちらも変異があるようですが、今回は幼虫からの飼育ですのでサクラセグロで間違いないと思います。
ホームページも拝見しました。成虫の検索については、ハグロハバチ亜科については大あごの形状など難しい部分もありますが、ほぼ問題ないと思います。
翅脈の「肛室」については、HPに書かれているとおり、「臀室」と同じもので、Anal cellの和訳と思われます。「肛室」は、「昆虫分類学」(平嶋義宏 著、川島書店、1989年)によります。
吉田さんありがとうございました。
参考文献
- [1] 吉田浩史(2006) 大阪府のハバチ・キバチ類
- [2] 原色昆虫大圖鑑III 第9版 1988 北隆館 —— 最初の方に、翅脈とかの用語の解説があります。
- [3] 内藤親彦(2004) 兵庫県におけるハバチ類の種多様性 ——PDF版が公開されています。兵庫県立 人と自然の博物館 (http:// hitohaku.jp/ publications/ book.html)このページの自然環境モノグラフ1の「表紙、目次、図版」の図版68にサクラセグロハバチの写真が載ってます。なお、このPDFむちゃくちゃ重いです… 。
- [4] 蜂が好き (http:// www.raipon.jp/ ) —— 掲示板でお世話になりました。
- [5] 神戸発 自然と蜂のページ (http:// www.kcc.zaq.ne.jp/ athalia/ main.htm) —— 情報をいただいた吉田浩史さんのホームページです。