コナジラミ写真集 Japanese Whitefly Gallery

Aleurochiton orientalis Danzig, 1966
イタヤカエデコナジラミ(新称)

山梨県北杜市で見つけました。 日本での記録はありませんが、 ほぼ間違いないように思います。

大きな特徴としては、 Acer mono イタヤカエデにつく、 年2化で夏型と越冬型の2型ある、 大型で越冬型は長さ2mmに達する、 4齢幼虫は夏型も越冬型も1齢から3齢までの脱皮殻を背負う、等です。

ホストは周年 Acer mono イタヤカエデのようです。 近くにあった、ハウチワカエデやウリハダカエデでは見つかっていません。 Aleurochiton属は種レベルの狭い食性を示すようなので イタヤカエデ以外のカエデ類につく可能性は低そうです。

Alerurochiton属は夏型と越冬型の2型あることが知られており、 これは他のコナジラミ類には見られないようです(小さい違いはあると思いますが)。 ただし、標高1500mの場所では夏型が見つからないので、 寒い場所では年1化なのかもしれません。

幼虫は脱皮殻を背負います。 脱皮殻を背負う性質はAlerurochiton属の他の種では見られないようです。 脱皮殻は脱落することがあります。 特に晩秋には脱皮殻をつけている個体は見つかりませんでしたので、 それ以前に脱落していると思います。

落葉樹で越冬する種類はみな同じようですが、 秋、4齢幼虫もしくは蛹の状態で 落葉する葉っぱについたまま 越冬します。

元々日本に生息していたのかどうかは、 日本の北方系のコナジラミはほとんど調査されていない印象があり、 想像で語るしかありませんが、 ホストは日本に自生する植物、 単食性、 お隣のロシア沿海地方に生息している、 といったことから元々日本にいた可能性は高いと思います。

どこかに報告しないといけないのでしょうが、 そのうち専門家の方に連絡してみようと思います。

和名は「イタヤカエデコナジラミ」を提案します。

(1) Summer generation 夏型

イタヤカエデの葉表につき、脱皮殻を背負う、 大型(長さ1.6mm)、白、円柱型。

前胸に1対、中胸に2対、後胸に2対の剛毛がある。 この剛毛で脱皮殻を支えているようです。


Fig 1-1a Aleurochiton orientalis. Summer generation. Habitat photo.
3齢以下の脱皮殻を背負っている。
loc: Japan 山梨県北杜市(清春四季の道) map. alt: 700m. date: 23-VII-2013. host: Acer mono イタヤカエデ.

Fig 1-1b

Fig 1-2a Aleurochiton orientalis Summer generation. Slide image.
前胸、中胸、後胸に剛毛がある。
loc: Japan 山梨県北杜市(清春四季の道) map. alt: 700m. date: 23-VII-2013. host: Acer mono イタヤカエデ.
Fig 1-2b pore.
越冬型のように大小2つの組み合わせではなく、 単独で大きい。
Fig 1-2c poreの配置 左右比対称なので、細かな位置は決まっていないようだ。 越冬型と同じような配置だが、数は少ない。

Fig 1-3a 夏型の脱皮殻
loc: Japan 山梨県北杜市(清春四季の道) map. alt: 700m. date: 22-X-2012. host: Acer mono イタヤカエデ. size: 1.6 x 1.4 mm.

Fig 1-3b

(2) Overwintering generation 越冬型

夏型と同様にイタヤカエデの葉表に付き脱皮殻を背負います。 脱皮殻はどこかで脱落するので、ついていないこともあります。 夏型よりさらに大きく、大きい個体(メス?)は2mm近くになります。 茶色っぽい色をしており、独特の模様があります。 凸型です。 標高の高い場所(1600m)では、 8月中旬に越冬型の4齢幼虫が見られます。 ここでは夏型の脱皮殻が見られなかったので、 年1化かもしれません。 葉が落ちる頃には背面は分厚いワックスの殻で覆われます。 落ち葉とともに地面に落ちて、そのまま越冬するようです。


Fig 2-1a Aleurochiton orientalis. Overwintering generation. Habitat photo.
越冬型の4齢幼虫だと思います。 8月中旬にはもう出てました。 まだ薄っぺらな感じです。 背中に脱皮殻を背負っています。
loc: Japan 山梨県北杜市(八ヶ岳横断歩道) map. alt: 1500m. date: 15-VIII-2013. host: Acer mono イタヤカエデ.

Fig 2-1b

Fig 2-2a Aleurochiton orientalis. Overwintering generation. Habitat photo.
晩秋の個体は膨れており、 背面には分厚いワックスの殻で覆われます。 脱皮殻は脱落しています。
loc: Japan 山梨県北杜市(城山公園) map. alt: 800m. host: Acer mono イタヤカエデ. date: 22-X-2012. size: 2.0 x 1.9mm.

Fig 2-2b

Fig 2-3a
大きさが小さいので♂かもしれません。
loc: Japan 山梨県北杜市(八ヶ岳横断歩道) map. alt: 1500m. date: 13-X-2012. host: Acer mono イタヤカエデ. size: 1.5 x 1.25mm.

Fig 2-3b

Fig 2-4a Aleurochiton orientalis. Overwintering generation. Slide image.
loc: Japan 山梨県北杜市(八ヶ岳横断歩道) map. alt: 1500m. date: 7-XI-2012. host: Acer mono イタヤカエデ.

Fig 2-4b vasiform orifice. (2-4aとは別個体)

Fig 2-4c margin.

Fig 2-4d 前胸に1対、中胸に2対の剛毛がある。

Fig 2-4e Twin pore?
danzig1966にある Twin pore だと思います。 大きい方は1.3μm、小さい方は0.5μmぐらいだと思います(小さすぎて測れない)。
Fig 2-4e Twin pore の配置
danzig1966のイラストには、twin poreは単一のドットで表現されています。 左右比対称ですし細かい位置は決まっていないようですが、 おおむね農色の部分に集まっているようです。

Fig 2-5a Adult.
ビニール袋に入れたまま室内に放置しておいたら羽化していました。

Fig 2-5b 左にあるのは脱皮殻です。

Fig. 2-6a
脱皮殻が脱落した個体。
2012年10月22日、山梨県北杜市(清春四季の道 標高700m付近)、イタヤカエデ、 約1.9x1.7mm

Fig. 2-6b

(*) 不明


Fig *-1a 晩秋に見られましたが、死骸だと思います。 夏型か越冬型かよくわかりません。
2012年10月22日、山梨県北杜市(清春四季の道 標高700m付近)、イタヤカエデ、 約1.5x1.4mm

Fig *-1b

Scientific synonyms

なし

Distribution

Host

Aceraceae カエデ科 Acer mono イタヤカエデ

Bibliography

(C) Hepota