Japanese Whitefly Gallery

Rhachisphora styraci Takahashi, 1934
エゴノキコナジラミ

本種は Styrax japonica エゴノキのについています。 やや細い枝(1cm以下)で見られるらしいです。 記録にはありませんがキンメツゲ(Ilex crenata イヌツゲの園芸品種) からも報告がありました。

台湾のRhachisphora属に関する文献ko1992を眺めてみましたが、 枝に付いていると書かれた種は無く、 かなり珍しいかもしれません。

1. Styrax japonica エゴノキの個体

1.1 エゴノキの個体の生態写真 その1

はむしさんから提供していただきました。

Photo © M. Hayashi
Fig. 1-1 Rhachisphora styraci, on Styrax japonica, puparium, habitat photo.

1.2 エゴノキの個体の生態写真 その2

近所の公園で見つけました。 生息密度は低いです。


Fig. 1-2a Rhachisphora styraci, on Styrax japonica, puparium, habitat photo.
2012年11月19日、山梨県北杜市(真如苑)標高750m、 エゴノキ、2 x 1.4mm。
Fig. 1-2b
こんな風に枝に付いてます。

2. Ilex crenata イヌツゲの個体

三重県の石黒樹木医事務所さまが 自身のウェブサイトにて、 キンメツゲ(イヌツゲの園芸品種。このページではイヌツゲとしておきます)、 エゴノキコナジラミらしきものが大量に発生している という情報を発信しておられました。 興味があったので、連絡をとって検体を送っていただきました。 石黒さまありがとうございます。

検鏡してみました。 特徴的なところしか見てませんが、 エゴノキコナジラミで良さそうです。

検体の多くは寄生蜂が脱出した後か、 もしくは寄生蜂につかれていました。

なぜこのように大発生するのにこれまで誰も気づかずにいたのか 気になります。 まったくの想像ですが、 「 通常は寄生蜂によって発生は強く押さえられており、 そのため稀にしか見ることができず、 本来複数の植物につくのにこれまで発見されなかった。 今回は天敵の蜂が近くにいない状況であって大発生した。 たまに大発生することもあったが、 一般の人はカイガラムシかなにかだと思ってどこにも報告されなかった。 」 ということかなと思いましたが、 どうでしょう…。

2.1 イヌツゲの個体の標本写真1

薬を複数回まかれたようで、すべて死骸のようでした。 死骸なのでカビの菌糸等があると思います。


Fig. 2-1a Rhachisphora styraci, puparium, on Ilex crenata.
rhachis(中央から放射状に伸びている淡色部)は 左右非対称の部分があるので、変異がありそうです。 亜縁部の刺はほとんど失われていますが、 痕跡があるものの配置は 原記載とおおむね一致しているようです。
loc: Japan Mie pref. host: Ilex crenata. coll: Hideaki Ishiguro.

Fig. 2-1b Submarginal spin.
亜縁部の刺の拡大です。

Fig. 2-1c Dorsal disk, Enlarged. 1: Dorsal granules. 2: Dorsal capitate setae. 3: Dorsal tubercles.

2.2 イヌツゲの個体の生態写真

こちらも死骸なので、生きている状態とは色が変わっていると思います。


Fig. 2-2a Puparium.

Fig. 2-2b Emergence holes of parasites.
穴があいていますが、 寄生蜂の脱出痕だと思います。

2.3 イヌツゲの個体についていた寄生蜂

検体の多くは寄生蜂が脱出したものか、 中に寄生蜂を宿しているものでした。 一つの蛹殻に複数(1〜3)の寄生蜂が入っています。 以下の写真はこれらを取り出してスライド標本にして撮影したものです。 羽化したものではないので翅は伸びておらず翅脈はわかりません。

Evansがコナジラミにつく寄生蜂の検索表を作っています(リンク参照)。 これで調べると(翅脈を無視して)、Amitus属でよさそうです。

Evans2008等を見ると、 Rhachisphora属につく天敵が一つも記載さていません。 Rhachisphora属は、台湾やインドなど 南〜東南アジアが主な産地なので、 研究が遅れているのかもしれませんね。 原産地での天敵の研究は非常に重要だと思います。 盆栽等の植物を輸出したいと考えているなら、 日本はもっとこれらの研究を進めるべきでしょうが…。


Fig. 2-3a Amitus sp., female.
♀の触角は8節。元々10節だが先端の3節が融合して一つに見える。
Fig. 2-3b Amitus sp., male.
♂の触角は10節。
Fig. 2-3c front tarsi.
前脚の跗節は5節。
Fig. 2-3d mid tarsi.
中脚の跗節は5節。
Fig. 2-3c hind tarsi.
後脚の跗節は5節。
Fig. 2-3c thorax, male, dorsal view.
Fig. 2-3d head, female, ventral view.

Scientific synonyms

Distribution

Host plants

Aquifoliaceae モチノキ科 Ilex crenata イヌツゲ [unauthorized]
Styracaceae エゴノキ科 Styrax japonica エゴノキ [tak1934]

Bibliography

Web Links

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