大幅に書き直しました。 こちらをご覧ください。
高倍率マクロ撮影では撮影倍率を上げれば上げるほど被写界深度(ピントが合う範囲)が狭くなって行きます。 絞り込むと被写界深度を上げる事ができますが、回折という現象により、絞り込むほどに解像度が低下します。 これらの現象は、撮影倍率を上げるほど顕著になります。
このため立体的な昆虫等の撮影においては 絞りの選択が非常に重要になると思われるのですが、 その関係を具体的に示された資料がネット上で見つかりません。 しょうがないので自分で考えてみましたが、正しいかどうかは不安です。 詳しい方に聞いてみようかと思いますが、とりあえずアップしておきます。
難しい事はよくわかりませんので、原理的な事は他を見てください。 回折、エアリーディスク、レンズの分解能等で検索するといろいろ見れます。 ここでは、レイリーの基準という分解能の式から始めます。 それによると、分解能δは以下の式で表す事ができます。 分解能の意味は、物体面上の距離δ離れた位置の点を見分ける事ができるという意味だと思います。
λは光の波長で可視光線はだいたい0.38 μmから0.75μmです。 NAはレンズの開口数と呼ばれており、以下の式で定義されます。
ここでnは空気の屈折率で、ほぼ1です。 θはレンズに入射する光線の最大角度と光軸との角度です。
ここでaを物体から物側主面までの距離、Dをレンズの開口径とすると、
で求まります。 妙な気がしますが、 物側主面が湾曲しているからという解説が AnfoWorld にありました。
aと焦点距離fと倍率Mは以下の関係にあります。
また、公称F値A、焦点距離f、開口径Dは以下の関係にありますから、
整理すると分解能は以下の式で求まります。
解像度rは物体面の撮影範囲Oを物体側分解能δで割った値と定義します。 一般的かどうかは知りません。
像側の分解能も同じように求める事ができますが、 像側主点と像面との距離はf(1+M)になるので、NAとδは違う値になりますが、 像面の撮影範囲をδで割った解像度は物体面側と同じ値になります。
WikiPedia英語版の解説 と同じ考え方ですが、 被写界深度無限大のときの処理の関係で、式を整理せずにそのまま計算します。
aは物体からレンズまでの距離、bはレンズから像までの距離、 Dはレンズ開口径、cは許容錯乱径です。 b1とb2は像面でボケの大きさがcになる位置(?)です。 b1とb2は幾何学的相似性から以下の式で求める事ができます。
レンズの基本公式
から以下の式で物体側の位置を得ます。 ただし、b1 <= fの場合は、無限遠まで焦点が合います。
最後に、被写界深度 DOF は
で得られます。
許容錯乱径cは、通常は撮像面の対角線長の1/1600を使うようですが、 高倍率マクロ撮影では像側分解能で制限されますから、それを使います。 つまり、Iを像面の幅、rを解像度とすると、
この2倍の値(エアリーディスクの直径)を使うべきだったかもしれません。 まぁ、倍違っても狭い被写界深度には大差ないですが…
波長λは0.75μmで計算しました。 レンズの焦点距離には依存しません。 撮像素子の大きさごとにグラフが分かれています。 理論的な値で、実際にはレンズの性能にも依存します。 通常開放に近くなるとレンズの収差が大きくなるので、これより悪くなると思います。 実線は解像度と絞りの関係です。 破線は解像度と被写界深度の関係です。 線の色は、撮影倍率(35mm換算)に対応しています。 青:x1,橙:x2,黄:x4,緑:x8,茶:x16です。 解像度の意味は物体側の撮影範囲を物体側の分解能で割った値です。 像側の撮影範囲(CCDの大きさ)を像側の解像度で割った値も同じになります。 被写界深度は、物体側の撮影範囲に対する比(パーセント)です。 すべての目盛は対数になっています。
撮像素子の幅が36mmの場合。 絞りは公称F値。
撮像素子の幅が23.4mmの場合。 絞りは公称F値。
撮像素子の幅が17.3mmの場合。 絞りは公称F値。
撮像素子の幅が6.2mmの場合。 絞りは実効F値(有効F値)。 実効F値の場合は倍率に依存しなくなり、実線は1本になってます。 クローズアップレンズを付けた場合も同じ。たぶん…
(未稿)
ピント位置から外れた場所のボケの大きさがどうなるか調べてみました。
距離に関して0から無限大までをグラフに表せるようにするため、 距離として以下のようなxを使ってみます。
ここで、aは物体とレンズの間の距離、 uは-0.25から1の変数です。 u=0のときxは焦点位置となり、u=1のときxは無限大、 u=0.25ではx0/3、u=0.5ではx0、u=0.75ではx0*3になります。
薄いレンズの公式より、xに対する像側の焦点yを求めます。
焦点ボケから決まる分解能δ1を求めます。 分解能は焦点ボケの直径の1/2としておきます。 Dは開口径、bは像とレンズの間の距離です。
回析ボケによる分解能δ2を求めます。 λは波長で0.75μmとしておきます。 Aeは実効絞りです。
総合的な分解能は、2つの分解能の和とし、 解像度に変換してみます。
実線と点線とは線は、ピント位置の解像度がそれぞれ、1600、800、400の場合です。 ピント位置の解像度は回折現象による上限です。 線の色はレンズの焦点距離によって変えてあります。 意外に焦点距離による差が小さいです。
一般にコンデジはCCDが小さいので、被写界深度が深いと言われますが、 高倍率マクロでも同じでしょうか? 実線は焦点距離50mm相当で、破線は14mm相当です。
手持ちの機材で具体的に見てみます。 まず理論値です。 青がフォーサーズ機で、 オレンジがコンデジにクローズアップレンズをつけた場合です。 クローズアップレンズはraynoxの MSN-202です。 焦点距離はだいたいです。
ほとんど同じですね。 では実際に撮影してみましょう。 左の写真はフォーサーズ機、右はコンデジです。 ピントが合っている位置における回折による解像度が、 800程度と同じになるような絞りにしてあります。 予想通り、だいたい同じようになりましたね。 ※写真はクリックすると拡大します。
ビデオ撮影用に新しいコンデジを買ってみたんですが、 ビデオだと解像度は緩めてもいいので被写界深度を確保したいんですが、 これ以上は絞れないので、どうにもならんです… orz
だまされた…
結局、あまり有効な手段はありませんが、 ビデオ撮影の場合は 解像度を犠牲にしても良いので、 どこまで絞り込むか。 ワーキングディスタンスと前玉の大きさ 使いやすさ